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前回は、小中学生の視力低下の原因である弱視に付いてお話ししましたが、今回は、心因性視力障害についてお話しします。
心因性視力障害とは、心理的ストレスが原因で視力低下を来たしたもので、子供の目の心身症の一つで、最近子供によくみられます。
眼球や視神経には異常がなく、眼鏡で近視、遠視、乱視などを矯正しても視力が出ないものをいいます。
視力が悪いわりには日常生活でそれ程、不自由そうにしていないのがこの疾患の特徴で、
自分自身で視力低下を訴え眼科受診することは少なく、学校の視力検査で視力低下を指摘されて、受診することが多くみられます。
年齢的には7、8歳から14歳位までの児童・思春期の女児に多く(男女比は1:4程度)、
遠見視力(遠くを見る視力)、近見視力(近くを見る視力)ともに不良である場合が多くみられます。
そして、視力検査時、トリックテストといって、暗示を与えながらプラスとマイナスのレンズを組み合わせ、
度の無いレンズで検査することで良好な視力が出るという特徴があります。
また、視野検査をすると視野が極度に狭くなる求心性視野狭窄や、視野を測定していくうちに徐々に視野が狭くなるらせん状視野などの様々な視野異常を呈することがよくあります。
その他、色覚異常、心因性聴力障害の症状を伴うことがあります。
心理的なストレスの原因としては、学校や家庭での心の悩みを抱えていることが多くみられます。
学校関係では、「入学、転校」「クラス替え」「先生や友人との関係」「部活」「いじめ」など、
家庭内では、「両親の不仲、離婚」「母子関係における問題、特に母親の愛情の不足」「兄弟との関係」などが原因と考えられますが、
色々な要素が複雑に絡み合っているものと思われます。
いずれにせよ、寂しい、つらいなどの気持ちが根底にあり、自分にもっと注目して欲しい、
自分を構って欲しいという欲求が、視力障害という形で助けを求めるサインを発信していると考えられます。
治療としては、暗示療法として点眼薬が効果的なこともあり、また、眼鏡に憧れる眼鏡願望が原因の場合、
眼鏡を掛けさせることで視力がよくなるものがありますので、一時期、度なしの眼鏡を掛けさせることがあります。
予後は一般に良好で、1年以内に視力が改善するものがほとんどですが、家族、教師などの理解や協力が必要となります。
原因として最も多いのが、母親との関係で、もっと注目されたい、甘えたいという場合で、子供とのコミュニケーションやスキンシップが大切になります。
視力改善せず長期化する場合、精神科あるいは心療内科を受診し、心理カウンセリングを受ける必要があることもあります。